COLUMN
コラム今回は訪問看護という仕事について、現在の状況や動向も踏まえた上で、筆者の訪問看護師としての今の心境について、ご紹介していきます。
訪問看護の需要は、年々高まっています。
2025年には地域包括ケアシステムが本格的に導入になる予定で、それには看護師が15万人必要と言われていますが、今の段階では9万人ほどしか働いていません。
私が訪問看護師として働き始めたのは7〜8年前のことですが、そのころと比べても医療度の高い利用者さんが増えてきており、急性期の病院から直接在宅に帰るにあたって、訪問看護の導入を検討しているという依頼も増えてきており、医療度も高くなってきています。
訪問看護師として働き始めた当初は、内服管理や在宅酸素を使っており、状態観察下での入浴介助が必要な人、PEG管理などが主なケア内容でしたが、最近では点滴はもちろんですが、人工呼吸器を常備している人への訪問もしています。
訪問看護師というと、ひとりでの訪問による責任の重さや大変さがあるに加えて、キャリアアップのイメージがつきにくい人も多いかもしれません。
ただ、訪問看護経験者からすると、確かに訪問看護師は大変なことも多いですが、その分魅力も数多くあります。
また訪問看護師のキャリアアップは管理職の道だけでなく、いま在宅での医療度が高くなってきているからこそ、特定看護師の資格を取ってキャリアアップを目指すことも可能です。それだけでなく、訪問看護師の視点をもったケアマネージャーへの転身など、多方面へのキャリアアップを考えることもできると思っています。
このように訪問看護師でも、キャリアアップはできますし、魅力もたくさんある職業です。
しかし、訪問看護師のイメージとして、キャリアアップが難しい上に、一人での訪問での責任の重さやきついといったイメージからなかなかなり手がおらず、人手不足になりさらに大変な環境になってしまうといった状況になってしまっていると感じています。
私が、訪問看護師になりたての頃に比べて、利用者さんもケアマネージャーも共に、訪問看護利用のハードルは下がってきているように感じます。
訪問看護ステーションは、競争が激しくできてもすぐに潰れてしまう事業所が多いのも事実ですが、あちこちにある中でも生き残っている事業所が数多くあるのは、それだけ需要も多いということだとも感じています。
潰れてしまう事業所の要因としては、うまく認知されなくて依頼がなかなか来なかったケースもあるかとは思いますが、一定数の中には看護師が集まらず、既定の人数を下回ってしまい、廃業するしかなくなってしまったというところもあるのではないかと考えています。
それは、もちろん訪問看護師として働き始めて、やはり責任が重かったと思ったり、訪問がきついといった理由もあるかもしれませんが、経営を回していくために入職した後の指導教育をきちんとできないことが一つの原因ではないかと考えています。
また、訪問看護でのケアに正解はなく、利用者さんの望む在宅生活に合わせて、それぞれの看護師の看護観を発揮できる場所だと私は思っていますが、ときには管理者の看護観の色が強い事業所もあります。
そこでの看護観の一致があれば、続くかと思いますが合わなかった時には、スタッフとしてはしんどいばかりで達成感や訪問看護の醍醐味を感じられず、辞めてしまう人もいるのではないでしょうか。
また、前述したキャリアアップでは、急性期とはまた違った訪問看護師としてのキャリアアップも望めますが、そこのところはある程度経験してみないと分からないこととも言えるでしょう。
訪問看護師にも、向き不向きはあると思います。
しかし、ある程度経験してみてからその判断をしてほしいです。
そのためには、ある程度訪問看護師の楽しさみたいなのを分かってもらうための指導教育が必要ではないかと考えていますが、経験者が多いことや時間的な余裕から指導教育が足りない事業所がほとんどではないかと思っています。
もっともっと、事業所単位で新人教育に力を入れることができたら、いまの看護師不足も解消されるのではないかと考えています。
そして個人的には、きちんとした指導教育を受けて、訪問看護の魅力や素晴らしさを知ってもらいたいと感じています。
2025年には、日本の人口の3分の1が65歳以上になると予測されています。
今後、ますます訪問看護の需要が増えていく中で、訪問看護ステーションの数は増えていますが、訪問看護師はまだ十分とは言えない状況です。
そこで、日本訪問看護財団などの関連団体は「訪問看護アクションプラン2025」を策定し、訪問看護師の充足を図り、24時間365日対応できる体制の構築を目指しています。
その一環として、新卒看護師が訪問看護師を目指していけるような教育体制を整え、訪問看護師の安定的な確保を狙っています。
それが功をそうしているのか、新卒ではありませんが、20代の若い看護師が訪問看護ステーションに入職するのを目にすることが多くなりました。
しかし、訪問看護ステーション自体には、まだ教育体制が整っていない事業所も多く、経験年数の浅い看護師には、なかなかハードな状況になってしまう環境となってしまっているのが現状です。
そして、そんなきちんと教育も受けられない中で、独り立ちし訪問に行くことになり、不安と大変さで辞めてしまう人が出てしまうことで、さらにハードな環境に陥ってしまうといった悪循環になっているように感じます。
しかし、訪問看護ステーションの多くは、経営上のことも考えると、余裕を持った人材を採用することも難しく、教育もままならないといったところが多いのも現状です。
まずは、十分な人数が確保するためには事業所の収益を増やしていかないといけないのですが、訪問看護の報酬はさらに厳しいものになってきており、「訪問看護アクションプラン2025」を実現させていくための財源の工面が、いまの訪問看護ステーションには難しいと言っていいでしょう。
それに、事業所の収益を上げるのにも限界があります。
したがって、訪問看護師を増やしていくためには、現在訪問看護師として働いている看護師一人ひとりが、現在の日本の医療体制や訪問看護の動向について興味を持ち、訪問看護師をひとりでも増やしていこうと、意識して新人スタッフの育成に携わっていくことが必要だと思っています。
そして訪問看護ステーション自体で、そのような雰囲気づくりをしていくことも大切だと感じています。
現在、私は訪問看護師として働きながら、新しく入ってきたスタッフにも訪問看護の魅力を知ってもらいたいと思っています。
そのため今回の記事では、指導教育の視点に少し偏ってしまったところもあるかもしれません。
しかし、現在の訪問看護の人材不足の解消の部分、肝になってくるところでもあると感じており、今後の在宅医療を支えていく上でとても大切な部分にもなってくるのではないかと思っています。
訪問看護は、病院での看護とは若干視点が異なってきます。
病院の経験では、解決できない問題も多く、訪問看護師として独り立ちしていくには、経験者でもある程度の指導教育が必要となってくる分野だと私は考えています。
指導教育がしっかりなされないままに一人で訪問をし、解決されない問題ばかりにぶち当たることで、訪問看護の魅力を経験しないままに辞めてしまうことで、訪問看護師の充足がなかなか図れないといったことにも陥っているように思います。
私が、訪問看護師として働き始めたときにもきちんとした指導教育を受けたかと言ったら、そうではありませんでしたが、私自身はデイサービスの経験が長かった分、在宅での臨機応変な対応の面も自然とできたため、いまでも続けることが出来ています。
したがって、現在の訪問看護の事業所は、もっともっと在宅での看護師の役割などの部分の指導教育に力を入れていくべきだと私は考えています。
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