COLUMN
コラム現在、国は入院期間を短くして、急性期が落ち着いたら在宅での療養に切り替えていこうとしています。
それにともなって、訪問看護師の役割は在宅医療には欠かせない存在となってきているのが事実です。
とはいっても、どれくらい需要が高まっていて、どんな役割を担っているのか疑問な人も多いでしょう。
今回は、厚生労働省のデーターなども見ながら、訪問看護師の役割や需要などについて、分析してみました。
訪問看護ステーションは、2010年以降約2倍になっています。
この統計からは、訪問看護の需要も高まってきていることが分かります。
以前に比べて、介護保険が普及してきたこともあり、病院や施設ではなく在宅で介護をしていきたいと思うご家族も増えてきました。
また訪問看護での医療処置も年々増えてきており、特に褥瘡の処置や排便コントロールのための浣腸・摘便、緊急時の対応の必要性が増えてきています。
がんの末期などで、住み慣れた自宅で最期を迎えたいという人も増えてきており、肌感でもターミナルや在宅看取りでの訪問看護の依頼が多くなっているように感じます。
前述もしたとおり、訪問看護師の需要は増々高まってきており、厚生労働省が公表した訪問看護事業所の看護職員需給見通し試算では、一人の看護師が超過勤務10時間以内/月、有給休暇5日/年を取得する場合、団塊の世代が75歳以上になる2025年までに12万人必要としています。
ワークライフバランスを考えるなど、有給休暇を20日以上とした場合は13万人必要と推計されています。
厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上になる2025年を目途に地域包括ケアシステムの構築を進めており、それにともなって医療ケアが必要な人も地域で生活していく機会が増えてくるでしょう。
訪問看護師の役割は、そんな医療ケアの必要な人が安心して在宅で生活できるようにサポートしていくことです。医師や関係機関、その他の多職種と連携をとりながら利用者さんを支えていくために、訪問看護師は今までよりもさらに重要な立場となってくるでしょう。
訪問看護の看護内容としては、一番多いのが病状観察で96.7%、次に本人の療養指導で59.9%、次いでリハビリテーションの47.5%等となっています。緊急時対応については8.7%、ターミナルケアは1.7%ですが、訪問看護ステーションの特色によって、ここの辺りの数字は変わってくるでしょう。
また、リハビリについては看護師が行うというよりも、リハビリの専門職への依頼が多いです。その中で、屋外歩行や階段昇降などリハビリの専門的な知識や技術がなくても行えることを看護師が実施するということはあります。
また、この統計では浣腸・摘便は10番目になっていますが、実際に現場で働いていると浣腸・摘便を必要とするケースは数多く見られます。
訪問看護で一番重要になってくるのが、病状観察です。
入院するほどではないけれども、専門的知識をもった人の観察が必要というケースで訪問看護は利用されます。
また、リハビリ目的の訪問看護でも、リハビリスタッフは病状の変化については、なかなか分からないことも多いため、看護師が介入して病状の悪化がないか、あらたな症状などの出現がないか、経過を追っていきます。
この場合、看護師が毎週訪問することもありますが、月に1回だったり3ヶ月に1回だったりすることもあります。
リハビリ目的での訪問看護の場合、看護師の訪問は利用者さんの認知レベルや病状によって変わってくると思っておいていいでしょう。
ただし、厚生労働省からリハビリスタッフが主な介入の場合、概ね3ヶ月に1回は看護師が訪問して、状態観察を行わなければいけないことになっています。
訪問看護は、週に1〜2回の訪問が基本です。
医療保険の場合、週に3回までの訪問と決まっています。
訪問看護師が、毎日訪問できるのは「厚生労働省が定める疾病」のときか、特別訪問看護指示書が発行されたときです。
この場合も、24時間看護師がいるわけではなく、最大でも看護師が1回の訪問で介入できる時間は1時間半です。
したがって、病状の悪化を防ぐためには看護師の訪問以外のときに、家族やご利用者様本人での管理が必要となってきます。
しかし、一般の人はどのように管理していけば良いのか分からなかったり、誤った知識となっていることもあります。
そのため、看護師は訪問した際に状態観察をしてアセスメントしたのちに、次に看護師が来るまでにどのように療養していけばいいか、適宜指導やアドバイスをしていきます。
訪問看護で多い依頼が、リハビリテーションでの依頼です。
ADLの維持のためなどで、理学療法士や作業療法士が訪問します。
訪問看護では在籍している人が少ないですが、ときには発声訓練や嚥下機能低下のための訓練目的で、言語聴覚士が訪問することもあります。
似たようなものに、訪問リハビリがありますが訪問リハビリは、医療機関や老人保健施設からの派遣で、訪問看護でのリハビリスタッフの訪問は、訪問看護ステーションからの派遣です。
リハビリ内容については、大きな変わりはありませんが、訪問看護の場合リハビリを行っていく上で、看護師の状態観察が必要とされている人も多く、医療ケア度が高かったりバイタルの変動が顕著に見られる利用者が多いでしょう。
したがって、リハビリメインで介入している利用者さんでも、状態の異常がないかリハビリスタッフは注意しなければいけません。また、看護師は利用者さんの状態に合わせて見てほしいところやリハビリ時に注意してほしいこと、リハビリで行ってほしいことなど連携が必要となってきます。
訪問看護の利用料の支払いでは、介護保険制度を利用した場合、医療保険を利用した場合、自費の3つがあります。
介護保険での利用の場合、医師の指示書のほかに要介護認定とケアマネージャーによるケアプランが必要になります。
訪問時間 | 単位数 | 費用額(10割) | 利用者負担額(1割負担) |
20分未満 | 313単位 | 3,130円 | 313円 |
20分~30分未満 | 470単位 | 4,700円 | 470円 |
30分~60分未満 | 821単位 | 8,210円 | 821円 |
60分~90分未満 | 1,125単位 | 11,250円 | 1,125円 |
引用:介護報酬の算定構造 介護サービス(厚生労働省)
※地域単価を10円で出しています。地域単価は地域によって違うため、それぞれの地域で料金に誤差が出てきます。
この他、緊急時の加算や点滴やバルーンチューブ、胃ろうなどの経管栄養などがある場合には特別管理加算というものが付くことがあります。
医療保険の場合、1律に90分まで同じ料金です。
ただし、医療保険での訪問看護の利用は、介護保険の対象外の方やがん末期の方が対象となります。
介護認定を受けている場合、基本的に介護保険が優先して利用されますが、がん末期のように「国が定める疾病」の診断がある場合は、医療保険での介入になります。
このほか、「精神科訪問看護指示書」が発行されたときも医療保険での介入となっていきます。
報酬 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
週3日まで(看護師・リハビリスタッフ) | 5,550円 | 555円 | 1,110円 | 1,665円 |
週4日目以降(看護師) | 6,550円 | 655円 | 1,310円 | 1965円 |
週4日目以降(リハビリスタッフ) | 5,550円 | 555円 | 1,110円 | 1,665円 |
医療保険の場合も、24時間体制加算や特別管理加算がつく場合があります。
介護保険や医療保険での訪問看護の利用の場合、保険制度により利用制限が設けられています。
自費での利用の場合は、そのような保険制度の縛りがないため、疾患や年齢での利用制限なく利用することができます。
ただし、全額自己負担のため基本料金が4,000円〜8,000円/回と高額です。
これに加えて、深夜に訪問の場合は加算が付いたり、緊急時の対応で加算が付いたりといったことがあります。
ただ、自費の場合は保険制度に縛られていないため、事業所ごとに料金設定は違っており、事業所によっては、3時間まで2万円といった感じで料金設定をしているところもあります。
自費はこのように利用料金が高いのがデメリットですが、保険制度に縛られていない分、比較的融通のきいた訪問ができるのがメリットです。
介護保険の場合は、要介護度で設定されている点数以内で訪問しなければいけませんし、医療保険の場合、基本的に1回の訪問は1時間半までで、週に3回までと決まっています。
それが自費での利用になると、そこの制限がなくなるため、利用者さんが本当に必要な分のサービスを受けることが可能になるでしょう。
今回は、訪問看護師の役割についてご紹介してきました。
いま、国は療養のメインを病院から在宅へ移行しようとしています。
そのため、医療ケア度の高い人も在宅で生活することが増えてきました。
訪問看護では、看護師としてのスキルが落ちるのではないかと心配な人もいるでしょう。
しかし、訪問看護はむしろ看護師としてのスキルは、より上がって来るものだと考えています。
特に、訪問看護では循環器や脳血管疾患といった枠で、分かれていません。
さまざまな疾患を持った人を見ていきます。
そのため、さまざまな疾患の知識や薬、さらには介護技術まで必要となってきます。
ひとりでの判断やひとりでケアを行う不安がある人もいるかもしれませんが、今後訪問看護は在宅医療での重要な役割に立ってきます。
看護師のスキルを高めたいといった人は、もちろん認定看護師や専門看護師を目指すことも可能です。したがって、看護師としてさらにレベルアップしていきたいという人には、おすすめの職種といえるでしょう。
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