COLUMN
コラム今回は、訪問看護のご利用者さんとのエピソードをご紹介していきます。
実際、業務などをネットなどで調べてみても、イメージが付きにくい人もいるでしょう。
今回のエピソードをみれば、訪問看護で看護師がどんな動きをしているのかも、さらにイメージを深められるのではないでしょうか。
「衝撃エピソード」から「せつないエピソード」「ほっこりエピソード」まで、さまざまなエピソードをご紹介していきます。
ぜひ最後までお読みください。
はじめのエピソードは、ご夫婦で訪問させていただいていた利用者さんです。
奥様はパーキンソン病で車いす生活、ご主人は認知症といったご夫婦でした。
いつも訪問は9:30から入らせていただいていたのですが、到着し家の中に入ると奥様がトイレ前で倒れていました。
意識はあったので安心しましたが、朝7時ごろに転倒して訪問看護がくるからと私が訪問するまで待っていたそうです。
ご主人も認知症で、転倒時の状況がつかみにくかったのですが、車いすから滑り落ちるようにして転落したとご本人からお話を聞きました。
とりあえず、ご本人のバイタルチェックを行い、状況をその場でケアマネに報告。
すると、ケアマネさんがすぐに駆けつけてくれて、私も一安心。
転倒しているのを見た瞬間は、本当にドキッとしました。
私が訪問看護師になりたてのころの話です。
まだ、訪問看護ステーションに入職して数日の頃、管理者と一緒に末期がんでターミナルの利用者さんのところに同行させてもらいました。
その利用者さんは、点滴でモルヒネを入れながら痛みのコントロールをしていたのですが、それでも痛みが取れない状況でした。
シリンジポンプを在宅で使っているのを見たのも衝撃的だったのですが、病院ではイチ看護師がなかなか目の当たりにできない、末期がんの人の医師からの今後の方針についての話しを一緒に聞いたときの、情景がいまでも忘れられません。
話の内容としては「意識がある状態でのモルヒネの量は今が限界。末期がんでさらに薬を増やすことも可能だが、意識はなくなってしまう。ただ、本人のことを考えると痛みが強いので、眠らせてあげた方がいいと思う。もし会わせたい人がいたら連絡とってください」といった感じでした。
その時のご家族の深刻な表情も含めて、医療ドラマでも見ているような光景でした。
当時は衝撃的すぎて驚きしかありませんでしたが、今になってよく考えてみると、住み慣れた家で最期まで家族と過ごす・・・それをサポートしていく訪問看護師は、本当に大事な仕事だと感じています。
このとき同行訪問させてくれた管理者やその状況で同行訪問を受け入れてくださった家族には、貴重な体験をさせていただけたことに感謝しています。
最後のエピソードは、最近復職してからの話です。
復職してから、すぐに担当となる人の新規依頼がありました。
誤嚥性肺炎で入院後、勤めている事業所の系列の施設に入所していたものの、状態が改善したためご自宅に帰るという人でした。
依頼が来た時点で多少話しは聞いていたのですが、実際に訪問するとなったときに、名前を聞いてびっくり!
以前、私が訪問していた利用者さんでした。
入院前に介入していた訪問看護の事業所が、以前私の勤めていたところというのは事前情報で知っていましたが、退職してから年月も経っていたので、てっきり知らない人かと思っていたんです。
退所日当日、午前中に熱が多少あったものの午後には下がり、次の日の定期訪問時も熱はありませんでした。
しかし、退所日から数日後に発熱し、カロナールの内服で熱を下げるという状況を繰り返すようになりました。
食事や水分もほとんど取れなくなり、退所後数日で慣れない介護と発熱により、奥様も疲弊しはじめ、元にいた施設へ戻ることになってしまったんです。
奥様は、入院中に拘束などをされていた様子を見て、もう延命治療はしないとおっしゃっていました。水分もあまりとれていない様子ですが、点滴なども希望していないようです。
帰ってきて数日のことなので、輸液だけでもしたら・・・もっと何か私たちにできることがあったのでは・・・とやるせない気持ちになっています。
ただこればかりは、ご本人とご家族の意思に関わってきます。
水分が摂れなくても点滴を希望しない人や家族は、在宅ではよく見かけます。
このように医療従事者としては、何とも言えない感情になることもありますが、どのように最期を迎えるかをご本人や家族の意思で決められるのは、在宅医療のいいところだとも感じています。
そして、そこを支えていく訪問看護師は本当に魅力的な仕事だとも改めて思いました。
最後にほっこりエピソードをご紹介していきます。
5年前にも一度、妊活に専念するために訪問看護師をお休みしていたことがありました。
事業所を退職するときに、ケアマネさんや利用者さんに退職の挨拶をすると、「残念、また戻ってきてくださいね」とおっしゃってくださった人が多く、訪問看護師として間違ったことはしてこなかったんだなと嬉しかったです。
訪問看護師として携わっていると、ケアマネさんと利用者さんとの情報共有で色々と話をしていきます。そこで「ありがとうございます」「助かります」といわれると、とてもやりがいを感じます。
ケアマネさんだけでなく、利用者さんやそのご家族との関係でも同じです。
特に訪問していた方が亡くなられた後、ご家族と連絡を取る機会があったときに「訪問してもらえてよかった」といわれたときには、より一層嬉しさが増しました。
訪問看護は病院勤務のときよりも、より利用者さんや家族、ケアマネなどと密に関わることができ、反応も直接聞けることが多いです。そういったところから、とてもモチベーションも保ちやすい職種でもあると、私は感じています。
訪問看護師として働いていると、嬉しいことやせつないこと、たまには理不尽なことをいわれることもあります。
しかし、利用者さんがありのままの姿でご自宅で安心安全に過ごしていくために、私たち訪問看護師がいるということを忘れずにこれからも働いていきたいと思っています。
はじめは病棟とのギャップで、苦しむ人も多い訪問看護ですが、慣れてくるといろんなところの魅力が見えてきます。
もし、訪問看護師として働こうか迷っている人は、ぜひ一度訪問看護の世界に飛び込んでみて、この魅力に触れられるまで続けてみてくださいね。
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