COLUMN
コラム今回は、在宅での看取りの際の訪問看護師の役割などについてご紹介していきます。
在宅看取りには、正解はありません。
だからこそ、みんな悩むところでこれで正解だったのか、と考えさせられる課題です。
ここでいま一度、看取りとはなんなのか、私たちにできることは何か・・・と考える一つの材料として読んでいただけたらと思います。
看取りとは「亡くなるまでの過程を見守ること」と表現されます。
高齢者やその家族に多くあるのが、最期は自宅で過ごしたいという希望です。
しかし、在宅看取りでは「家族の介護負担や精神的な負担」「緊急時の対応」など問題点もあります。
在宅看取りは、高齢者の場合ケアマネージャーがいることも多く、チームで行われていくものです。
そして、その中心には利用者とその家族がいて、どのように最期を迎えていきたいかの整理のお手伝いをし、それぞれの専門分野からサポートしていくことが私たちの役割だと考えています。
そんなチームの中で、訪問看護師はどのような役割を担っていくのか、次のところでお話していきます。
最近『看取り難民』という言葉が出てきています。
これは、病院や特養などでの看取りの受け入れが困難になり、看取りの場所が失われてしまった人のことです。
そこで、大きな役割を果たしてくるのが訪問看護です。
今後、自宅で看取るのは不安だけれども、どこにも受け入れ先がないから自宅で看取っていくしかないという人も増えてくるでしょう。
在宅看取りでの訪問看護師の役割は、住み馴れたご自宅で、ご本人ご家族ともに悔いの残らない最期を迎えるためのサポートをしていくことです。
自宅で最期を看取ってあげたいと思っている家族でも、日に日に状態が悪化していく中で、不安に感じることも多いです。
そんなご家族に、亡くなるまでの経過についてお伝えし、看取りに向けて少しでも不安を軽減させていくことが訪問看護師の役割だと思っています。
また、看取りの過程で出てくる痛みや不快感など、ご本人の苦痛を軽減させてあげるのも訪問看護師の役割となります。さらに、その苦痛を軽減したり、穏やかな最期を迎えられるように、訪問診療との連携を図っていくことも大切な役割となります。
在宅生活は、ケアマネージャーが中心になってケアプランに沿って実施していくことが基本です。しかし、看取り時期に入った利用者さんやその家族が悔いの残らない最期を迎えられるようにするためには、医療的な面の管理がとても大切になります。
ケアマネージャーや訪問診療と連携を図りながら、訪問看護師として穏やかな最期を迎えられるようにサポートしていきたいものです。
80代女性の方のケースです。担当ではなかったのですが、教科書に出てきてもおかしくない典型的なケースだと思ったので、ご紹介させていただきます。
訪問看護は、腰椎圧迫骨折をしてからADLが低下したため、リハビリと食事などがとれているかなどの確認や清潔ケアのため、開始となった利用者さんです。
高カリウム血症などで入退院を繰り返し、多少状態が落ちてきている様子はあったものの、訪問看護開始から急激な変化はなく、過ごされていました。
訪問看護開始から10か月を経過したころに、急に排尿が見られなくなりました。
もともと、腎不全をお持ちの方なので、その影響もあるかもしれませんが、この排尿がみられず、尿管カテーテルを挿入後から一気に状態が落ちていきました。
生活保護の方でしたが、状態が落ちてからは息子様と娘様が協力して、献身的に介護の方をされました。
急激な状態変化に、はじめのうちはなかなかな受け入れが難しい様子もありましたが、看護師が訪問の度にご家族のお気持ちを聞いたり、今後の対応についてお話をしていくことで、少しずつお母様の死についての受け入れができるようになってきたご様子だったようです。
そして最期は、看護師訪問時にはすでに化学呼吸になっており、処置などをしているときに呼吸が止まったとのことでした。
最期は、ご家族に「今までありがとう」「おつかれさま」と見送られながら亡くなったとのことでした。
状態が落ち始めてから亡くなるまでの期間は、2〜3週間のことです。
この短い期間で、ご家族が死を受け入れ、最期に落ち着いて看取ることができたのは、当時訪問を担当していた看護師のご家族へのアプローチの賜物だと思いました。
90代男性のケースです。娘様が時々様子は見に来てくれるものの、それも週末来てくださるかどうかの感じでした。奥様はすでに亡くなられており、基本独居で生活している方です。
私が訪問し始めたときには、かろうじて意思疎通もでき、シャワー浴ができている
状態でした。
しかしあるとき、理由は覚えていませんが入院され、退院後はADL低下が激しく、シャワー浴ができないのはもちろんのこと、行けていたトイレも行けなくなり、尿管カテーテルが挿入された状態で帰ってきました。
独居の方でその状態で帰ってきた理由も、10年以上前のことであまり覚えていませんが、ご本人の希望だったように思います。
寝たきりの状態だったので、看護師とヘルパーを組み合わせて1日3回何かしらのサービスを使い、寝たきりですが独居の生活を継続していきました。
そして、いよいよ尿量も減り、ヘルパーさんが朝訪問したときに、呼吸が止まっているところを発見。往診に連絡し、最期の死亡確認をしてくださったとのことです。
在宅看取りといったら、1つめのエピソードのように、ご家族に見守られて最期を迎えるといったものが多いです。
しかし、ご家族の状況やご本人の希望などから、こういったケースもあるのだと学びました。
「最期、一人で亡くなるのがかわいそう・・・」と思う人もいるかもしれませんが「自宅で亡くなりたい」というご本人の希望。
このケースを通して、どこで最期を迎えるのが一番嬉しいかはその人本人しかわからないことで、勝手なこちらの価値観の押し付けにならないように携わって行く必要があることも、このケースで学ばせて頂きました。
今回は、訪問看護における看取りについて、ご紹介してきました。
在宅での看取りは、訪問看護師を始めた5年前から比べても増えてきているように感じます。
看取りと一言にいっても、病院で状態管理をしていて、自宅で最期を迎えたいからという希望で在宅に戻られ、最期を迎えたり、訪問している中で状態が落ちてきて最期を迎える人もいます。
どんなケースでも、大切なのは在宅での看取りに向けての不安を少しでも軽減し、いい最期を迎えられたと思ってもらえるように、アプローチしていくことだと思っています。
看取りのアプローチには正解はありません。
だから、悩むところでもありますが、訪問看護はご家族とも関わる機会が多いので、ご家族の特徴なども捉えながら看取りに向けてのサポートをしていけるのではないかと思いました。
今回この記事を書いている中で、私も「看取りって何だろう・・・」ということを再度考えさせられました。考えても考えてもきっと答えは見つからないのかもしれませんが、永遠の課題として考えていく必要のあるものでもあると感じています。
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